UX DAYS TOKYO 2018 参加レポート
こんにちは。sitoです。
日本にいながら海外のUXが学べる「UX DAYS TOKYO 2018」が、3月16日〜3月18日にかけて開催されました。
そのうち、16日に行われたカンファレンスに参加し、6人のスピーカーのお話を聞いてきました。
「JOBS TO BE DONE」価値創造の新しい発見方法』 - Jim Kalbach(ジム・カルバック)氏
私は「Jobs To Be Done」という言葉自体を初めて知りましたが、近年、注目を集めている理論のひとつということなのですね。
「人々には成し遂げたい、終わらせたいジョブがあり、それを解決するためにプロダクトやサービスを雇用する」という点に着目して、イノベーションの機会を見つけるためのレンズのような役割をしてくれます。
※UX DAYS TOKYO 2018 カンファレンス概要より
ということで、JTBDの考え方を使っての、ユーザーにとっての価値の見つけ方を解説されました。
- JTBDは、顧客のニーズを、「JOB PERFORMER(who)」「Jobs(what)」「Process(how)」「Outcomes(Why)」「CIRCUMSTANCES(when/where)」の5つの要素で考える
- ユーザーが本当は何を求めているかにフォーカスすると、サービスの本当の価値が発見できる
- サービスの価値は継続的に見直していかなければならない
- ユーザーが満足を得られていない領域にビジネスチャンスがある
- ジョブストーリーを考えることで、どこのデザインに力を入れるべきなのかがわかる
- 技術ではなく、ユーザーにとっての価値でマーケティングしなければならない
『サービス・デザイナー2.0になるために必要なこと』 - Jamin Hegeman(ジェイミン・ヘグマン)氏
サービスデザインというのも言われてみれば当たり前に必要な考え方な気がしますが、ここで挙げられていた例のように細部までデザインされ尽くしたサービスというのは少ないように思いました。
- サービスデザインは製品の設計や、インタラクション、コミュニケーション、オペレーション、組織のあり方等広い領域の設計を手がける
- サービスデザインは人間中心である
- デザイナーが一人で考えるのではなく、ユーザーやスタッフ等と一緒に考える
- サービスを構造化、ビジュアル化して考える
- 社内のチームを、モバイル、テクノロジー、マーケティングというふうにわけるのではなく、ユーザーの体験ステージごとにわけてサービスを設計する
- サービスデザイナーとしての視点が身につくと、あらゆる体験が、どのようにデザインされたかを考えるようになる
ホテルの例が挙げられたせいか、個人的には日本の高級旅館等のおもてなし精神はこれに近いものがあるのかもしれないと思いました。(行ったことはない)
『会話形デザインにおける技術と社会的挑戦について』 - Adrian Zumbrunnen(エイドリアン・ザンブルネン)氏
会話形のUIは注目されているものの、個人的にはどうなのだろうと思っていたのですが、ユーザーにとっては何よりもめんどくささの解消が重要で、会話形のUIは効果があるということがよくわかりました。
- ユーザーはアプリをさがして、ダウンロードして、メールアドレスを入力してメールを受け取ってユーザー登録をして、というながれがとにかくめんどくさい ― アップデートのたびに変わるUIも嫌われる
- 会話形のUIにすることで、ユーザーはストレスなく、ときには自分がフォームにメールアドレスを入力したのだと気づくことなく自然な流れで入力してくれる
- ユーザーから情報を引き出す前に、会話の中でこちらが先に価値を提供することで、ユーザーも情報を提供してくれる
- ユーザーがWEBでなにをしたいのか、タッチポイントを絞って会話を設計する
- コンテキストによって会話の内容を変える
- 間やアニメーションで、リアルな会話を演出することができる
- ボットも意見を持つことで人間味のある会話になる
『ボットは、どのように話し、どのように聞くのか?人間とボットにおける会話の構造について』 - Abi Jones(アビ・ジョーンズ)氏
Google HomeのUXを設計した方ということで、とても高度なお話をいただきました。(少なくともsitoにとっては高度でした)
理解の及ばなかったところも多いのですが、googleの中の人はすごいことをやっている…!という印象でした。
- 人間が当たり前にできている、共通の世界認識やコンテキストの理解が、機会わできないということをわかっている必要がある。
- 人間とボットにおける会話の現状の課題は、ボットが会話のエラーリカバリーができないという点
『AR、その熱狂と後にあるもの』 - Boon Sheridan(ブーン・シェリダン)氏
まず冒頭で、この方の自宅がポケモンGOのジムになり、多くの人が集まったという実体験が挙げたれましたが、私自信も、ポケモンGOでARというものを認識しました。
ゲームが先駆けとなってARが広く認知されたことで、ARがさまざまなサービスに利用されるようになったこと、ARサービス設計のポイントなど解説していただきました。
- ARはVRのように専用の機器を使わなくても、スマホで体験することができる
- ARサービスを展開する前にユーザーが本当にそれを望んでいるかは調査する必要がある
- どんな問題をARによって解決するのか、焦点を絞って設計をする必要がある
- 狭い画面の中での、UI、操作性の設計は非常に重要
- リリース前にはかならずユーザーテストをすること
- 信頼出来る情報を提供する必要があり、個人情報の扱いにも十分に注意する必要がある
『UXにおける最良の決定の構築』 - David Sherwin(デイビッド・シャーウィン)氏 & Mary Sherwin(メアリー・シャーウィン)氏
UXデザインそのものというよりは、組織、チームでどのように皆が納得できる決定をくだしていくかという話で、他のセミナーと少し違う観点でおもしろかったです。みんなで決めようとするといつまでたっても決まらないというのはどこの国でもあるあるなのだなあと思いました。
賛成、反対意見がかわされる中での「決定」の行い方について、とても参考になるお話をいただけました。
- 「決定すること」に焦点をあてる。
- 基準をつくって、優先順位を決める。基準になるのは「エイス/ノーでこたえられるもの」「ダイナミックなもの」。「この方がかっこいいなど」情緒的な認証は基準にならない
- 選択肢を出す。製品について考えるべきことを網羅する。選択肢は同じ粒度で提示する。反対を恐れない。
- 選択肢を比較する。「2x2 matrix」など使うとよい。
- 自信を持って決定する。決定する過程で、チームメンバーにその決定の自信度0〜100%を投票してもらう。どのくらいの自信度で決定とするか、チームで明確にしておく。自信度の低い人の意見を聞くことでよりよい決定になる。
- 決定を共有する。十分な理由と決定のプロセスも要約して共有することでチーム納得してもらうことができる。
まとめ
全体として、常にユーザーに何を求められているか、どんな問題をクリアできたらユーザーにファンになってもらえるかという視点でデザインすることがデザイナーに必要なことだと、とても刺激を受けました。
とても余談ですが、お弁当とおやつも美味しかったです!
同時翻訳でお話を聞くのは慣れていなくて、噛み砕きながら聞くのがなかなかにハードでしたが、世界のUXデザインの考え方に触れる貴重な経験となりました。